2020/08/12 14:06



こんにちは。mugikoです。


今回はドイツの「ビール純粋令(Reinheitsgebot)」についてお話しします。

これは現存する食品に関する法律では最古のものといわれています。

中世バイエルン公国(現在のドイツ南東部)ではビールの風味付けに、
オーク樹皮やニガヨモギ、リンドウなど、さまざまなものが用いられていました。
しかし、販売促進のために麻薬作用のあるヒヨスなどを使ったり、
ハーブの香りでビールの質の悪さをごまかしたりすることが多く、問題になっていました。

他にも、ビールに小麦やライ麦を使用することで、
パンの原料の確保が難しくなり、国民の食糧が足りなくなることもありました。

そこで1516年4月23日にバイエルン公ヴィルヘルム4世によって制定されたのが
「ビール純粋令(Reinheitsgebot)」です。
「ビールの原料を大麦、ホップ、水に限定する」と定めました。

この法律の目的は、
「ビールの品質向上」と「小麦とライ麦(パンの原料)の使用制限」でした。

しかし、長年小麦を使ったヴァイツェンビールを造り続けていた
宮廷長官を務めるデーゲンベルク伯爵ハンス4世と
その一族の営む宮廷醸造所や一部の修道院にだけは小麦の使用が認められました。
デーゲンベルク伯爵はバイエルン随一の軍事力を誇っており
バイエルン王にとって重要な人物だったのです。
その後も幾度となく小麦を使った白ビール禁止令が出されましたが、
デーゲンベルク家は毎年多額の金を納めて権利を維持していきました。

しかし、1602年に後継が途絶えると、
特権はバイエルン公マクシミリアン1世
(マリー・ド・ブルゴーニュの夫の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世とは別人)に
返上されました。
マクシミリアン1世は早速白ビールの独占製造を始め、
その5年後には白ビール用の醸造所を新たに建てるほど大人気になりました。

こうして、莫大な白ビールの収益は、
三十年戦争の軍資金に使われました。

この醸造所は、300年近く良い財源となっていましたが、
18世紀半ばになるとポーターやペールエールの登場により需要が急減しました。
そのため独占のうまみがなくなった醸造権は1872年に開放され、
それまでは貴族や富裕層にしか飲めなかった白ビールは
一般庶民にも飲まれる様になったのです。
現在、ドイツのバイエルン州ミュンヘン市の観光名所になっている
世界一有名なビアホール、ホフブロイハウスは、
この白ビール醸造所を1897年に増改築したものなのです。

ちなみに、定められた材料に酵母が入っていないのは、
酵母の果たす麦汁をアルコールに変える役割がまだ知られていなかったためで、
後に原料の1つとして認められています。
1551年の法改定で、「Hefe」が原料に追加されました。
今でこそHefeは微生物である酵母と解っていますが、
当時はビールを造ったときに出る澱(おり)という意味で使われていたようです。

その後、酵母の正体が解ったのは19世紀のこと。
パスツールが、酵母が発酵に関わる存在であることを突き止めて純粋培養に成功しました。

この「ビール純粋令」は現在では多少内容を変えていますが
ドイツ全土に適応される法律としてきちんと残っています。

1987年、EC(欧州諸共同体)発足に際してビール純粋令は
保護主義を禁じているローマ条約に間接的に違反していると判断を下され、
ドイツ国内の醸造業者によるドイツ国内向けのビール醸造のみを対象とすることとなり、
輸出用ビールや、輸入用されたビールには適用されなくなりました。
1993年、ドイツ政府はビール純粋令をビール酒税法の一部として改めて法制化しました。
この新しい法では、醸造に用いる酵母によって、原料を制限しています。

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大麦麦芽のみを使う場合には下面発酵酵母を、小麦やライ麦の麦芽を使う場合には
上面発酵酵母で醸造しなければならない。
下面発酵ビールの原料には、大麦麦芽とホップ、酵母、水だけを使わねばならない。
上面発酵ビールの一部では、小麦麦芽やサトウキビから抽出した糖分を用いてもよい。

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以前はビール純粋令を守らなかった場合、
造ったビールの樽ごと全て没収という罰則がありましたが
現在では州当局が認めれば純粋令に則らないビールも造れます。

しかし、ドイツ国内の醸造所の多くは、ビール純粋令を遵守し、
消費者からも支持を受けているのです。

ルールや決まり事好きなドイツらしいですね。



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